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放射線の被ばくについて

放射線(エックス線)とは

放射線には、エックス線、ガンマ線、アルファ線など、いろいろな種類がありますが、医療、特に診断に用いられているものはエックス線です。エックス線は、光と同じ仲間です。波長がとても短く、高いエネルギーをもっています。そのため、光なら厚いカーテンで遮断できますが、エックス線では、鉄や鉛など、密度の高い物質を使わないと遮断出来ません。また光や電波と同じように体や空中に残る物でもありません。

放射線の単位について

医療で主に用いられる放射線の量を表す単位は、吸収線量の単位であるGy「グレイ」と放射線防護上で用いられるSv「シーベルト」を使用しています。Svは放射線防護分野で特別に決められた線量を表す単位で、X線・γ線についてはGy=Svと考えて差し支えありません。Svには等価線量と実行線量があります。

吸収線量 グレイ(Gy) 医療などで放射線を受ける量をエネルギー量で表した物理量
等価線量 シーベルト(Sv) 人の組織や臓器に対する放射線の影響は放射線の種類やエネルギーによって異なるため、組織や臓器の受ける放射線量を補正したものを等価線量といいます。等価線量は吸収線量に人体への影響の程度を補正する係数である放射線過重係数を乗じます。

エックス線の場合、吸収線量=等価線量のため、混乱を防ぐために本文ではすべてミリシーベルト(mSv)で表記しました。1Sv=1000mSv

自然放射線について

私たちは知らないうちに放射線を浴びています。宇宙からは常に宇宙線と呼ばれる放射線が地球に降り注いでいます。また地球上にはウランやラドンなど放射性物質と呼ばれるものが天然に存在しており、それら全てを含めて自然放射線と呼んでいます。飛行機で旅行に出かけたときは、地上より高い放射線を浴びることになります。

私たちが一年間に自然放射線を浴びる量は1ミリシーベルトほどです。これは『胸部エックス写真』の10枚分に相当します。ブラジルのガラバリという地域では、一年間に自然放射線を浴びる量は日本の10倍にあたる10ミリシーベルトと言われています。このような高自然放射線地域を対象として、研究、調査がおこなわれていますが、人体に放射線の影響が現れたという証拠、報告はありません。

X線検査の被曝線量について

当病院での撮影部位別の患者の被ばく線量
部位 被ばく線量(mSv) 部位 被ばく線量(mSv)
胸部正面
胸部側面
腹部立位
腹部臥位
頭部正面
頸椎
0.11
0.36
2.26
3.80
2.47
1.00
腰椎正面
腰椎側面
骨盤正面
膝関節
手指骨
マルチウス
グースマン
3.54
7.01
0.25
0.34
0.07
4.05
1.15

単位:ミリシーベルト(mSv)

放射線とその影響について

多量の放射線が人体の組織に当たると細胞内にイオン化が起こります。結果、細胞分裂の阻害、細胞内の遺伝子物質の損傷を起こします。 放射線による影響には、ある線量以上を受けないとおこらないもの(確定的影響)と、受ける線量がゼロでない限り、小さい確率ではあるがおこるとされているもの(確率的影響)の2つに分けられます。また、急性障害と晩発障害に分けられます。以下にそれぞれについてくわしく述べます。

確定的影響

放射線被ばくの量がある量(しきい線量)を越えないと、発生しない影響を確定的影響といいます。つまり、これ以上放射線をうけなければ発症しないという「安全値」があるということです。放射線被ばくによる影響のうち、がんと遺伝的影響以外は、すべて確定的影響になります。次の頁の図にそれぞれの症状にあたるしきい線量を載せました。また、自然放射線と放射線検査の線量を並べ、比較してあります。一般の放射線検査で、しきい線量を超えた被ばくを受けるということはまずありません。

確率的影響

確率的影響は、しきい線量といったものがなく、受ける線量がゼロでないかぎり、起こりうる確率があると考えられているものです。それが、「がん」と「遺伝的影響」です。放射線防護上問題となるのはこの確率的影響です。

遺伝的影響

遺伝的影響とは、産まれてくる子供や、次の世代に影響をおよぼしてしまうことです。強い放射線により、生殖細胞の中の遺伝子物質が損傷を受けた場合に、遺伝的影響が現れることがあります。これはハエやネズミ等の生物実験で遺伝子の突然変異がみられたからです。しかし、人間では放射線による遺伝的影響が確認された例は今のところありません。また、生殖腺以外の部位の被ばくでは遺伝的影響が発生することはありません。

急性障害

強い放射線を受けたときに、数週間以内にあらわれる障害のことです。下痢、嘔吐、発熱、やけど、脱毛、白血球の一時的な減少などがあげられます。

晩成障害

急性障害が現れないある程度の放射線を受けた後に、数年から数十年経ってからあらわれる障害のことです。がん、白血病、白内障があげられます。

胎児への影響

妊娠中に放射線検査を受けたことで考えられる障害には、「流産」,「奇形」,「発育遅延」などがあります。これらはしきい値のある確定的影響に分類されます。また確率的影響に分類される「小児がん」もあります。

胎児への影響は放射線を受けた時期によって異なります。受精後9日までは、妊娠に気付かないうちに胚が死んでしまいます。受精後2週から15週の期間は、「奇形」,「発育遅延」を発症する可能性がでてきますが、そのしきい線量は100ミリシーベルトで、エックス線検査でこのしきい線量を超えることはありません。よって奇形などの確定的影響は心配ありません。以前ICRP(国際放射線防護委員会)では、「生殖可能年齢の女性の下腹部のエックス線検査は月経開始から10日以内に行うとよい」と勧告していましたが、現在では確定的影響の心配がないことから、その必要性はないとしています。

しかし、しきい線量のない「小児がん」は放射線防護上、小さい確率ではあるが起こると考えられていますので、胎児が照射野に入るような検査は、安全面から緊急を要する場合以外は避けるべきと考えています。安全側に考える趣旨で、妊娠していないことが確実な月経開始から10日以内の期間に検査を行なうのがよいと考えています。

腹部以外の検査(胸部や四肢など)では生殖腺への被ばくはほとんどゼロに近いので、その検査を避ける必要はありません。

胎児の影響としきい線量
胎児期の分類 時期 影響 しきい線量
着床前期 受精~9日 胚死亡 100
器官形成期 受精後2~8週 奇形 100
胎児期 受精後8週~出生
特に8~15週
発育遅延
精神発達遅延
100
120

単位:ミリシーベルト(mSv)

主なエックス線診断の際の生殖腺の線量
検査
成人男性
成人女性
胸部単純撮影
腹部単純撮影
0.16
2.12
腰椎単純撮影
0.07
4.05
股関節撮影
3.68
0.78

単位:ミリシーベルト(mSv)
※は検出線量以下

X線検査を行なうための原則

エックス線検査を行うにあたっては、大事な2つの前提があります。ひとつは、不必要な被ばくをさせないこと、もうひとつは、被ばく線量をできるだけ少なくすることです。ICRP(国際放射線防護委員会)では、次のような勧告をしています。

正当化 正当化とはエックス線検査を行うことが、プラスの結果を生じるものでなければならないこと。つまりエックス線検査を受けることで得られる利益の方がエックス線による影響を上回っていなければならないこと。

最適化 最適化とはその正当化が確認された場合でも、検査を行うにあたっては患者さんの被ばくを少なくするための最善の方法を用いること。

放射線科では様々な方法でエックス線被ばく量を減らす努力をしています。また装置の進歩により、検査で受けるエックス線量は一昔前にくらべ激減しています。

放射線被曝のある検査とない検査

放射線科でおこなっている検査のなかには放射線を用いる検査と用いない検査があります。

放射線被ばくのある検査

一般撮影、造影検査、CT検査、骨塩定量、核医学検査

放射線被ばくのない検査

MRI検査(核磁気共鳴検査) 超音波検査