昔から脱腸(だっちょう)と呼ばれており、足の付け根の部位が膨らむ病気です。立っているときは膨らんでいるのに、横になると膨らみがなくなったりします。
また、膨らんでいるときには痛みを伴ったりすることがあります。基本的に手術でしか治すことはできません。
もう少しそけいヘルニアについて詳しく説明します。
ヘルニアってなに?
「ヘルニア」とは、ある組織が本来の位置から別の違う場所に移動してしまうことをいいます。
「そけいヘルニア」とは、そけい部のおなかの壁の筋肉が弱い部分に穴が開いてしまい、おなかの中にある腸などが飛び出してしまう状態です。
腹腔内から見たヘルニアの様子
原因としては、
- 加齢やストレスなどにより筋肉が弱くなる
- 重労働やスポーツなど、腹圧が高まる活動
などがあげられますが、はっきりとしたことはわかっていません。
どんな症状が出るの?
そけいヘルニアの症状には個人差がありますが、主に次のような症状が見られます。
- そけい部のふくらみ
最も典型的な症状で、特に立っているときや咳をしたときに膨らみが目立ちます。
横になるとふくらみは無くなります。夕方になるとふくらみが目立ちやすくなることがあります。
- 痛みや不快感
ふくらんでいるところに痛みや違和感、圧迫感を感じることがあります。
どうやって治すの?
おなかの壁に穴が開いてしまっているため残念ながら薬では治りません。
基本的には手術で穴を修復する必要があります。
そのままにしておくと、ふくらみがどんどん大きくなったり、時に陥頓(かんとん)してしまうこともあります。
陥頓とは、飛びだした腸管などが戻らなくなった状態のことで、そのまま放置してしまうと腸管が腐ってしまうため緊急手術が必要となることがあります。
自然に治ることはないため手術による治療が推奨されます。
手術の方法は?
そけいヘルニアの手術には、従来のそけい部切開法と腹腔鏡手術の2種類があります。
- そけい部切開法
膨らんでいるそけい部を約4-5㎝切開します。
弱くなっているところを直接見ながら確認しメッシュ(人工物)を用いて修復します。
手術時間は1時間程度です。
- 腹腔鏡手術
おなかに3か所、5mm程度切開します。
カメラでおなかの中を見ながらそけい部切開法と同様にメッシュを用いて修復します。
手術時間は1時間から1時間30分程度です。キズが小さいため手術後の痛みが少なく、カメラによる拡大視効果により出血が少ないなどメリットがあります。
当院では症例に応じてそけい部切開法と腹腔鏡手術のどちらにも対応しています。
また入院期間に関しても、日帰り手術から1泊あるいは2泊の入院治療まで、患者様のご希望に可能な限り沿った治療計画を提案しています。
糖尿病や心臓疾患などほかに現在治療中の疾患をお持ちの方でも、各診療科と連携しながら安全に手術、治療が受けられる体制を整えています。
ご相談について
そけいヘルニアは適切に治療(手術)を行うことで、症状の悪化を防ぎ、健常な日常生活を取り戻すことが可能な病気です。
当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせた個別の治療計画を立て、安全・安心な医療を提供します。
「そけいヘルニアかも?」とお悩みの方は、どうぞお気軽に外科外来にご相談ください。
専門の医師が丁寧に診察し、最適な治療法をご提案させていただきます。
そけいヘルニアの外来受診から手術までの流れについて
- 外来初診
問診と診察を行います。ヘルニアの脱出がはっきりしないときは初診日当日にCT検査を行うことがあります。
ヘルニアと診断した場合、基本的には手術をお勧めします。
手術を希望される場合は、採血、レントゲン、心電図などの術前検査を行います。
手術の日程を決定しますので、あらかじめご自身の予定を確認したうえで来院ください。
- 再診(術前説明)
術前検査の結果説明と手術の詳しい説明を行います。
麻酔科にて診察と麻酔の説明をさせていただきます。
看護師より入院の際の注意事項などの説明を行います。
- 入院・手術
入院後は病棟看護師が体調の確認を行い手術の準備を行います。
手術の時間が来ましたら、看護師が病棟から手術室まで歩いてご案内いたします。
手術自体は1時間から1時間30分程度ですが、麻酔や手術の準備などを加えると2時間から2時間30分程度手術室に滞在します。
手術が終わり、麻酔から覚めましたらBEDのまま病室へ戻りお休みいただきます。
手術の翌日よりシャワー浴は可能です。
退院日に創部の確認を行い問題なければ退院となります。
- 手術後外来
退院後外来にて術後の経過観察をさせていただきます。
創部の確認と痛みなどの有無の確認など行います。
手術後の経過に問題がなければ外来通院は終了です。