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ピロリ菌について(一般者向け)

①  ピロリ菌について

Q1.ピロリ菌って何ですか??
A1.
ピロリ菌【写真】は胃の粘膜で生きるらせん形の細菌です。胃には強い酸(強酸)があるため、通常の菌は生息できません。しかしながら、1983年にAustraliaのWarrenとMarshallという2人の医師が胃からの分離培養に成功し、ピロリ菌が胃の中に生息していることを報告しました。では、なぜそのような強酸の胃の中で生息できるのでしょうか?
ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を持っています。この酵素の働きにより胃酸を中和させることができます。このような特性を持っているからこそ、ピロリ菌は胃の中で生活できるようになったのです。


写真.ヘリコバクター・ピロリ菌(電子顕微鏡写真)

②  ピロリ菌の感染ルート

Q2.どのようにして感染するのですか??
A2.
感染経路はまだはっきりとわかっていませんが、口を介した感染(経口感染)が大部分と考えられています。また、ピロリ菌の感染率は、衛生環境と関係していると考えられており、上下水道が十分普及していなかった世代の人で高い感染率となっています。日本人のピロリ菌の感染者数は約6000万人といわれ、これは日本総人口の約半数にあたります。
Q3.感染を予防する方法はありますか??
A3.
現時点では予防法は確立しておりません。上下水道が十分に完備されていなかった時代に生まれた団塊の世代以前の方では約80%前後と高いのですが、若い世代の感染率は年々低下してきています。

③  ピロリ菌の引き起こす疾患について

Q4.ピロリ菌はどのような悪さをするのでしょうか??
A4.
ピロリ菌が胃粘膜と反応を起こし、炎症を引き起こします。胃・十二指腸潰瘍の患者さんのうち約90%はピロリ菌感染が陽性の方で、このような方は潰瘍を繰り返す傾向にあります。ピロリ菌を除去することで、大部分の潰瘍の再発が抑制されることがわかってきました。その他、胃癌や胃のリンパ腫、血液を固める作用を持つ血小板が減少してしまう疾患(特発性血小板減少性紫斑病)などの病気の原因に関わっている可能性が指摘されています。
胃癌に関して言えば、除菌治療後も明らかな改善が得られないピロリ菌によりダメージを受けた胃の粘膜から胃癌が発生しやすくなります。胃の広範囲がピロリ菌により変性した場合、ピロリ菌陰性の方の6-10倍の胃癌発生リスクがあるため、このような粘膜の変化が進まないうちに早期にピロリ菌を発見し、除菌治療を行うことが必要となってきます。
そのため、潰瘍等のピロリ菌に基づく病気を既往に持つ方だけでなく、一般的にピロリ菌の検査による早期発見、早期治療が必要となってくる時代がすぐそこまで来ています。

④  除菌治療について

Q5.どのようにしてピロリ菌の存在を調べるのですか??
A5.
当センターで行っている検査は以下のようなものがあります。
どの治療法も精度の高い検査ですが、残念ながら100%とは言い切れません。
場合によっては医師の判断に基づき、複数の検査を行い総合的に判断することもあります。
どのような治療を行うかは医師と一緒に相談して決めましょう。
1)    迅速ウレアーゼ試験(内視鏡併用)
内視鏡検査で胃の粘膜を採取し、試薬と反応をさせて判定する検査です。ピロリ菌の持つ酵素(ウレアーゼ)と試薬との反応で生成されるアンモニアを検出することで判定します。
2)    鏡検法(内視鏡併用)
採取した組織を染色して顕微鏡で直接観察し、判定する方法です。
これらは内視鏡検査の際に行うことができるため、元々内視鏡検査を予定されている方にお勧めです。

3)    尿素呼気試験
検査用のお薬を飲み、それがピロリ菌の産生するウレアーゼと反応することで生成される二酸化炭素の量を測定することで感染の有無を判定します。検査時間は約30分程度です。

4)    血液検査
血液を採取してピロリ菌に対する抗体の値を調べます。この抗体値に基づき、判定します。
ただし、除菌後も6-12ヶ月は抗体価の高値が持続するため、除菌後の判定として使用するには注意が必要です。

Q6.除菌治療とはどのようなことをするのですか??
A6.
上記のような検査を行い、ピロリ菌が存在している場合に治療を行います。
具体的には2種類の抗生剤、1種類の胃酸分泌を抑える薬、計3種類を同時に1日2回、7日間服用していただきます。除菌精度を上げるために、かならず用法・用量は指示の通りに行ってください。御自身の判断で服薬を中止してしまいますと、除菌に失敗し、治療薬に耐性を持ったピロリ菌が存在してしまう可能性もあります。
またこの期間はアルコールも控えていただくため、予定に合わせてお薬を処方致します。

Q7.成功率はどれくらいですか??失敗した場合はもう除菌できないのでしょうか??
A7.
正しく服用した場合の1回目の除菌治療(1次除菌)成功率は約80%です。
1次除菌で失敗した場合には抗生剤の種類を変えて2次除菌を行います。だいたいの方がこれにより除菌し得ますが、それでも除菌ができなかった場合は、さらに抗生剤を変更し、3次除菌を行います。
なお、除菌判定は除菌薬内服終了後6週以上経過してから行います。

⑤  除菌治療の副作用について

Q8.除菌治療に伴い問題は何かありますか??
対処はどうすればいいですか??
A8.
1)    アレルギー症状
内服薬に対するアレルギー症状(発疹、かゆみ、発熱、呼吸困難など)が出現することがありますので、その様な症状が出現したときには服薬を中止し、当センターまたは薬局へ連絡して頂くかまたは直接、来院してください。
2)    軟便、軽い下痢
このような症状が出ても、頻回の下痢とならない限りは服薬を自己中断せずに、お薬を飲み切ってください。ご不安な時はいつでも当センターまたは薬局へご連絡ください。
3)    血便
抗生剤使用に伴い、大腸が炎症を起こしてしまうことがあります。便に突然血液が混じり始めたり、腹痛が出現したときには、すぐに当センターまたは薬局へご連絡ください。
4)    味覚異常
食べたものの味がおかしいと感じたり、苦味を覚えることがあります。
その他、内服期間中に何かいつもと違う症状が出てくるようでしたら、当センターまたは薬局に相談し、内服加療継続に関して方針を決めていきましょう。

文責:消化器病センター(内科)  中村 文彦