内視鏡手術について

内視鏡手術とは

内視鏡手術とはお腹や胸、または関節などの中に内視鏡を挿入し、映し出されるモニター画像を見ながら手術を行うものです。内視鏡を挿入する穴(5〜12mm)と手術器具を入れる2〜4個程度の穴(5〜12mm)だけで手術を行うため、従来の手術のように大きく皮膚を切開する必要はありません。そのため、一般的に従来の手術と比較して、手術後の痛みが軽く、体にかかる負担も少ないため、手術後の回復も早く、早期社会復帰が可能な場合が多いと言われています。また傷が小さいため美容上も優れています。しかし、術者は直接臓器に触れずにモニター画像を見ながら手術を行うため、難易度が高く、手術時間も長くなる傾向があるため、その適応には十分な検討と術者の修練が必要となります。

産婦人科
腹腔鏡下手術・子宮鏡下手術

診療科 産婦人科
治療名・適応
  • 腹腔鏡下手術
    良性卵巣腫瘍:卵巣腫瘍摘出術、付属器(卵巣・卵管)切除術
    子宮内膜症:チョコレート嚢胞摘出術、癒着剥離術
    子宮筋腫:子宮筋腫核出術
    子宮外妊娠:卵管線状切開術、卵管摘出術
  • 子宮鏡下手術
    子宮内膜ポリープ:ポリープ摘出術
    子宮粘膜下筋腫:筋腫核出術

方法と特色・利点

  • 腹腔鏡下手術
    おへその直上から5mmの細いカメラ(スコープ)を入れ、おなかの中を映したテレビモニターを見ながら、左右の下腹部から入れたマジックハンドのような細い棒型の器械(鉗子)を用いて手術を行います。開腹手術に比べると手術創が小さい分、腹痛や便秘・不妊症の原因となる術後の骨盤内癒着を引き起こす危険性が低く、体に対する負担が少ないのが特徴です。
    また、最近ではより小さい傷を目指して、細径腹腔鏡(直径が3mmのスコープ)を用いたより短時間の手術(ミニ腹腔鏡手術と体外受精 )を主に不妊症の原因を調べる目的で行っております。
  • 子宮鏡下手術
    経腟的に子宮の入り口から5mmのスコープを挿入して、子宮の中の様子をテレビモニターで見ながら子宮鏡の先端にある高周波メスにより腫瘤を切除・切断する手術を行っています。腹部に傷が残らないのが特徴です。

実績(2017年に施行した件数)

腹腔鏡下手術 123件
子宮鏡下手術 89件

整形外科
内視鏡下椎間板ヘルニア切除術

診療科 整形外科
治療名 内視鏡下椎間板ヘルニア切除術
(MicroendoscopicDiscectomy : MED)
適応 腰椎椎間板ヘルニア
腰部脊柱管狭窄症

方法と特色・利点

腰椎椎間板ヘルニアに対する手術療法は、従来は一般にLove法(皮膚切開は4〜5㎝程度で、片側の傍脊柱筋を椎弓から全部剥がして術野を展開し行う)が用いられてきましたが、近年より低侵襲治療の試みがなされ、MEDは1997年海外で椎間板ヘルニアに対する新たな低侵襲手術法として報告され、1998年から本邦にもMEDが導入されました。

手術はLove法の半分以下の皮膚切開(2㎝弱)で、椎弓から傍脊柱筋を剥がすことなく、筋間を通して椎弓上に直径16〜18㎜のチューブを挿入し、ファイバースコープを通してモニターに術野を映し出して手術する方法です。従来法に比べて、創部が小さく、術後の痛みが少ないこと、美容面ですぐれています。さらに、椎弓から筋を剥がさないので、筋肉の脱神経による脂肪化が少なく、術後の創部の違和感が少ないことがメリットです。

また、腰部脊柱管狭窄症の除圧術にも有効な手段の一つとなっています。

実績(2017年に施行した件数)

内視鏡下椎間板ヘルニア切除術 6件

整形外科
膝関節鏡視下半月板手術

診療科 整形外科
治療名 膝関節鏡視下半月板手術(部分切除術、縫合術)
適応 半月板損傷

方法と特色・利点

半月板は、膝関節を構成する大腿骨(だいたいこつ)とその下にある脛骨(けいこつ)に囲まれた関節軟骨の間にあり、緩衝効果としてクッションの役割をはたしています。けがや年齢と共に損傷すると、膝関節の曲げ伸ばし、階段の昇り降り、歩行等で痛みを感じるようになります。症状が軽く、日常生活に問題なければ経過をみていきますが、痛みや日常生活に支障がでる場合は手術を行います。約20年以上前は、直接半月を切除する手術を行ってきましたが、現在は関節鏡を使用し、膝前方に約1cmのキズ、数ヵ所で手術を行います。

特に最近は技術の進歩により、半月板の部分切除術だけでなく、縫合術も多く行われるようになっています。術式は損傷の状態で選択させていただきますが、キズが小さく、術後の痛みも少なく、早期退院も可能となっています。

実績(2017年に施行した件数)

膝関節鏡視下半月板手術 18件

消化器内科
内視鏡的粘膜下層剥離術

診療科 消化器病センター 内科・外科
治療名 内視鏡的粘膜下層剥離術
(Endoscopic Submucosal Dissection, ESD)
適応 早期消化管癌(早期食道癌、早期胃癌、早期大腸癌)

方法と特色・利点

近年、消化管がん(食道、胃および大腸がん)は死亡率・罹患率ともに高く注目されております。胃カメラや大腸カメラといった内視鏡検査により、がんが見つかった場合には、手術などによって病変を摘出することで完治する可能性も少なくありません。

特に、早期がん(病巣が粘膜内または粘膜下層の浅い部分に留まる状態)で発見された場合、現在は手術ではなく内視鏡的に治すことも医療技術の進歩により可能となりました。それが内視鏡的粘膜下層剥離術です。内視鏡を口もしくは肛門から病変部まで挿入した上で、局所注射を行って病変を含む周囲の粘膜・粘膜下層を膨隆させます。電気メスにより膨隆した部分を病変ごと剥離して切除します。入院期間は1週間程度で、当センターでは積極的にこの治療を取り入れております。利点としては、消化管を部分的に切除するのではなく、病変という局所のみを内視鏡的に切除して治療が完了するため、術後疼痛などの自覚症状も一般的になく、術後から歩行や少量ながら飲水も再開していきます。手術に比べても極めて負担の少ない低侵襲治療のため、術後の体力の低下などを心配される方にもお勧めです。

当院の特色の一つである内科・外科の連携の強さを基盤にして、消化器病センターとして適切な診療・治療方針を検討・協力しながら最善の治療を提供できるように努めております。

実績(2017年に施行した件数)

食道癌 16件
胃癌 21件
大腸癌 33件
累計 (治療導入時-2018年5月) 上部 (食道・胃):365件,下部 (大腸):154件

消化器外科
単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術

診療科 消化器病センター 外科
治療名 単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術
適応 胆石症、胆のうポリープなど

方法と特色・利点

現在、胆嚢摘出術はお腹の4か所に穴を開け腹腔鏡を用いて行われていますが、単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術はお臍に1か所の穴だけで胆嚢を摘出する方法です。高度な技術を必要としますが、傷が1か所だけで、しかもお臍の部分だけなので、数か月後にはあたかも手術の傷痕がないように治ります。ただし炎症が高度な場合は周囲との癒着が強いため適応外となります。

実績(2017年に施行した件数)

単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術 15件

消化器外科
腹腔鏡下ソケイヘルニア手術

診療科 消化器病センター 外科
治療名 腹腔鏡下ソケイヘルニア手術
適応 ソケイヘルニア(脱腸)
前立腺や大腸などの下腹部手術の既往がない症例

方法と特色・利点

腹腔鏡を用いて、ポリプロピレン製メッシュでお腹の中からヘルニアの出口を覆う手術で、近年、普及してきています。従来法と比較して、手術創が小さいので術後の痛みが少なく、入院日数も短くなります。また再発率が低く、両側にヘルニアが存在しても、同一の創から同時に修復が可能です。

実績(2017年に施行した件数)

腹腔鏡下ソケイヘルニア手術 58件

消化器外科
食道癌に対するESD

診療科 消化器病センター 内科・外科
治療名 早期食道癌に対する内視鏡的粘膜下層切開剥離術
適応 早期食道癌

方法と特色・利点

早期癌(stage0)とは病巣が粘膜内にとどまる状態です。このような症例に対しては外科的手術ではなく内視鏡的粘膜下層切開剥離術を行っています。この方法は色々な器具を駆使して癌病巣を内視鏡的に切開・剥離して切除する方法です。これにより従来、手術を行っていたような広範囲の病変でも手術室にて全身麻酔下に安全に切除できるようになり、患者さんのQOLに寄与しています。当院では内科と外科が協力し、検討しながらこの手技を行っており、つねに新しい技術・手技を導入できるように努めています。

実績(2017年に施行した件数)

内視鏡的粘膜下層切開剥離術 14件

消化器外科
単孔式腹腔鏡下虫垂切除術

診療科 消化器病センター 内科・外科
治療名 単孔式腹腔鏡下虫垂切除術
適応 急性虫垂炎
保存的治療後の計画的虫垂切除

方法と特色・利点

単孔式腹腔鏡下虫垂切除術はお臍に1か所の穴を開け、腹腔鏡を用いて虫垂を摘出する方法です。傷が1か所だけで、しかもお臍の部分なので、数か月後にはあたかも手術傷痕がないように治ります。従来の開腹法と比較して、手術創が小さいので術後の痛みが少なく、入院日数も短くなります。また手術創が目立たないので美容の面からも優れた方法です。

実績(2017年に施行した件数)

単孔式腹腔鏡下虫垂切除術 31件

消化器内科・外科
腹腔鏡・内視鏡合同手術

診療科 消化器病センター 内科・外科
治療名 腹腔鏡・内視鏡合同手術
Laparoscopy Endoscopy Cooperative Surgery (LECS)
適応

腫瘍径が5cm以下の胃GISTもしくは粘膜下腫瘍

胃にできる腫瘍は粘膜から発生する胃癌が最も多いのですが、粘膜の下にできる腫瘍もあります。それらをまとめて粘膜下腫瘍と呼び、良性のものから悪性のものまでさまざまなタイプの腫瘍があります。そのなかに消化管間質腫瘍(Gastrointestinal stromal tumor: GIST)と言われる腫瘍があり、小さければ、経過観察でよいですが、大きくなると転移をきたすことがあるため、2cmを超えるものは手術を考えないといけない病気です。

方法と特色・利点

現在、多くの施設では腫瘍径が2〜5cmの腫瘍に対し、腹腔鏡下胃局所切除術が行われています。しかし、腹腔鏡のみの手術では腫瘍の位置がわかりづらく、腫瘍の周辺ごと、まとめて切除せざるを得ませんでした。切除する範囲が大きくなると、胃の変形を来たし、通過障害などの後遺症を起こす可能性がありました。これらの問題点に対し、腹腔鏡・内視鏡合同手術が開発され、従来の方法に比べ、余分な切除をなくすことで、胃の変形を防ぎ、機能が残せるようになりました。

この手術(LECS)は全身麻酔にて行います。腹腔鏡下胃切除と同じように、おなかに5~12mmの穴を5カ所あけ、そこから鉗子という細長い道具を入れ、おへそから入れた腹腔鏡でおなかの中を観察しながら、手術を進めていきます。同時に早期胃がんに対して行われている内視鏡的粘膜下層剥離術の手技を利用して、内視鏡医が胃の内側から腫瘍の周りを剥離します。その後、その剥離線に沿って、胃の外側から外科医が腫瘍を切除していきます。腫瘍を切除して、穴が開いた胃の部分は腹腔鏡下に縫合処置をして閉じ、腫瘍を回収して手術終了です。

この手術方法は、消化管を部分的に切除するのではなく、局所のみを切除するため、従来の手術に比べても極めて負担の少ない低侵襲治療と考えます。術後の体力低下などが懸念される患者さんにも可能です。

当院の特色の一つである内科・外科の連携の強さを生かし、消化器病センターとして適切な診療・治療方針を検討・協力しながら最善の治療を提供できるように努めております。