医師国家試験に合格し医師免許証が与えられた諸君は、医師としての出発点にたったわけでありますが、病人から信頼される医師となるため、まず研修医として幅広い実際的な医療の基礎を学ぶとともに、医師としての基本的な心構えを習得しなければなりません。
医学の目標は、単に病気を治すことではなく、“病気で悩める人”を治療することです。治療は医学的知識に基づいて行うわけですから、常に研鑽に努め、新しい医学的知識・技術を吸収しなければならないことは言うまでもありません。
また、“病める人”の立場にたって考える治療を行うことが肝心です。
医師ほどあらゆる階層の人々と接触しなければならない職業はないと思われますが、それだけに幅広い社会性と温かい人間性が要求されます。
諸君も若くして先生と呼ばれ、とかく“奢れる心”が芽生えてくるものでありますが、決して慢心してはなりません。
医学を学ぶほどにいつかその限界を悟り、病気を治せないことの無力さを思い知らされるときがくるものであります。
このことを心に銘記して、謙虚さを失わない人間性豊かな医師に育ってもらいたいと思います。