放射線治療
高いエネルギーの放射線を利用し悪性腫瘍などの治療を行います。
- 使用機器
- VARIAN社製:CLINAC-2100C
放射線治療とは、がんとその周辺に放射線を照射することによって、がん細胞を死滅させる効果を狙った治療法です。
日本の場合、以前までは、がん治療の第一選択は外科的手術であり、放射線治療の対象は手術が出来ないほど進行した症例がほとんどであったことから、一般的に、気休めにする治療という認識のされ方をしてきました。しかし、近年のコンピュータ技術の進歩により、ときには手術を上回る治療法としての位置付けがなされている領域も出てきています。
放射線治療の基本的特徴は、局所療法であり、機能温存が可能であること、また根治治療のみを追求するのではなく、生活上の面からみた質(QOL)の維持といった多面的な治療が可能であるということです。
放射線治療の基本的特徴
- 局所療法である。
- 機能温存が可能である。
- 化学療法との併用が可能である。
- 高齢者に対する根治的治療が可能である。
治療方針
治療目的に応じた、幅広い照射法があります。
- 根治的照射
がんを完全に治す目的で照射する方法で、場合によっては化学療法と併用して行います。
- 緩和的照射
骨転移による痛み、脳転移による神経症状、がんによる気管、血管、神経などの圧迫による症状などを和らげる目的で照射します。
- 術前照射
外科的手術前にがん細胞を照射して小さくしておき、手術をしやすくする目的で照射します。
- 術後照射
外科的手術で切除しきれずに残ったがん細胞に照射することで、再発の可能性を低くする目的で照射します。
副作用
他のがん治療と同様に放射線治療にも副作用があります。
疲れる、食欲がなくなるといった全身的な症状が出ることもありますが、主な副作用は照射される部位に起こってきます。また、副作用が出てくる時期も治療中または終了直後の急性期のものと、半年から数年後から発生する晩期のものがあります。
- 急性期の副作用
一時的な症状で、治療が終了すれば、ほとんどのものは良くなります。下記に照射される部位別の症状を紹介しておきます。
- 皮膚
- 放射線が照射された皮膚には日焼けの様な変化が起こってきます。
- 発赤、色素沈着、乾燥、剥離といった変化が起こり、かゆみや痛みを伴うこともあります。症状によっては軟膏を処方する場合もありますが、治療が終了すれば2~4週のうちには落ち着きます。
- 頭部
- 頭痛、めまい、脱毛、吐き気などの症状が出ることがあります。
- 口腔、頚部
- 口やノドに照射されると粘膜炎を起こし、飲み込む時に痛みが出たり、声が出難くなることがあります。その他に口が乾いたり、味覚が変わったりします。粘膜炎の症状は治療が終了すれば良くなりますが、口の乾き、味覚の変化はしばらく続く場合もあります。
- 肺、縦隔
- 食道に照射されると食道炎を起こし、飲み込む時に痛みが出ることがあります。肺に照射されると、治療終了1~3ヶ月後に放射線肺臓炎による咳、発熱、息切れなどの症状が出ることがあります。
- 乳房
- 照射された乳房には上記の皮膚の症状が起きます。また、肺の一部にも照射されるため、治療終了1~3ヶ月後に放射線肺臓炎による咳、発熱、息切れなどの症状が出ることがあります。
- 腹部、骨盤、前立腺
- 胃や腸に照射されると、吐き気、腹痛、下痢などの症状が出ることがあります。また、膀胱が照射されると膀胱炎症状である頻尿、排尿困難などの症状が出ることがあります。
- 晩期の副作用
重篤なものはごく少数の人にしか現れません。重篤な副作用が起きない様に細心の注意を払って治療計画行い、照射をしているからです。
しかし、絶対に起きないとは言えないため、下記に照射される部位別の症状を紹介しておきます。
- 頭部
- 脳や脳神経の障害により、難聴、顔面神経麻痺、脳障害、下垂体機能低下などを起こすことがあります。また、眼に照射された場合は、白内障、網膜症などが起こり視力障害が出ることがあります。
- 口腔、頚部
- 皮膚に潰瘍が出来たり、硬くなったりします。唾液腺の機能が低下して口が渇き、味覚の異常も起ります。軟骨や下顎骨に炎症を起こし、手術が必要になる場合があります。脊髄症を起こし躯幹、四肢の麻痺やしびれが出ることがあります。甲状腺に照射されると甲状腺機能低下が起きることがあります。
- 肺、縦隔
- 肺は線維化し機能が低下します。線維化した容積が大きいと呼吸が苦しくなります。食道が細くなり、食事の通りが悪くなることがあります。心臓の周りに液体たまる心外膜炎が起ることがあり、液体の量が多い場合、心臓の拡張を妨げるため心不全になることがあります。
- 乳房
- 乳房が硬くなることがあり、腕もむくむことがあります。上腕神経に障害を起こして、腕や手がしびれたり、力が入らなかったりすることがあります。また、肺に照射されると肺に線維化が起こります。
- 腹部、骨盤
- 腸の内腔が狭くなったり、潰瘍ができ出血したりすることがあります。
膀胱壁が硬くなり、容量が小さくなることがあります。また血尿が出ることもあります。リンパの流れや血液の流れが悪くなり、下肢がむくむことがあります。卵巣、睾丸に照射されると不妊になることがあります。
放射線治療の流れ
[一日目]
- 放射線治療前の診察
放射線腫瘍医が、放射線治療によって期待できる効果と副作用を説明します。このとき質問があるときは遠慮なくお尋ねください。ご家族と一緒に受診されることをお勧めします。
- 治療計画
照射方法を決めるためにCT撮影をします。放射線腫瘍医はこのデータを用いて治療計画用コンピュータで具体的な照射方法の決定をします。
- 照射位置の確認
決定された照射位置が正しいか、治療装置で確認の写真を撮影します。このとき皮膚にマジックで印を付けます。この印は大事なものなので、治療が終わるまで消えない様に気を付けて下さい。
[二日目以降]
- 治療
実際の治療が始まります。予約した時間に治療室まで来て頂き、治療装置の寝台に決められた体位で横になり、5分程度動かないようにします。後は技師が皮膚に付けられた印に合わせて位置合わせをします。位置合わせが終わると技師は、部屋から出て行き照射を開始しますが、この間、テレビモニタで目を離さない様にしていますので、気分が悪くなった場合などは合図をする様にして下さい。毎日の治療時間は、部屋に入ってから出て行くまで10分程度です。
- 治療期間
照射は月曜日から金曜日(土日、祝日はお休み)の毎日行います。治療回数は、治療部位や目的、全身状態などによって異なりますが、通常5~7週間程度になります。この間、日常生活に制限はなく通常の生活をしていても支障ありません。
- 治療期間中の診察
最低でも週1回は放射線腫瘍医の診察を受けて頂き、放射線による影響をチェックします。治療に対する疑問や心配なことがあれば、このとき聞くことが出来ます。
- 経過観察
放射線治療が終了しても、定期的に主治医による診察を受けて頂き、治療効果や副作用の有無をチェックします。
注意事項
- 治療が始まってから数週間経つと、疲れが貯まり食欲もなくなってきます、治療中は十分に休養し、バランスの取れた食事をしましょう。治療効果を最大にするには、休まずに続けることが大切です。
- 治療が始まると、担当の放射線技師と毎日、顔を合わせる事となります、気になる事があったら、おひとりで悩まずに何でも相談して下さい。