ピロリ外来(医療従事者用)
・ はじめに
当院消化器病センターは、2011年4月から「ピロリ外来」を専門外来の1つとして開設しました。
近年、一般の方々にも周知されてきているピロリ菌の診療需要が高まってきております。そのニーズに応えるべく、ピロリ菌の存在診断のための検査、治療を目的としております。
当外来は自費診療となりまずが、ピロリ菌に対する検査および治療は比較的簡便なもので、ピロリ菌がいる場合には長期的に考えると、除菌する価値が大きいものです。
貴院へ通院されている患者様でピロリ菌除菌希望の方がいらっしゃるようでしたら、当院へご紹介いただけると幸いです。
・ Helicobacter pylori
1983年にWarrenとMarshallによって存在が確認されたHelicobacter pylori(以下,H.pylori)は,胃炎を初めとする様々な病変の発生に深く関与されていることが明確となったグラム陰性らせん桿菌です.日本国内での感染者数は人口の約半数とされております1).H.pylori感染の診断と治療のガイドライン2009改訂版2)では,除菌治療の対象となる疾患として,胃・十二指腸潰瘍,胃MALTリンパ腫,特発性血小板減少性紫斑病,早期胃癌に対する内視鏡治療後胃,萎縮性胃炎,胃過形成性ポリープ,機能性ディスペプシア等の数多くの疾患が挙げられ,積極的な除菌治療を行うことが推奨されております。
胃・十二指腸潰瘍
Miwaら3)が除菌治療後の潰瘍の再発率を胃潰瘍で2.3%/年,十二指腸潰瘍で1.6%/年と報告しており,従来の酸分泌抑制薬を用いた維持療法に比し,除菌治療の再発抑制効果は優れていると報告されております.抗生剤に対する薬剤アレルギーの既往が特にない方は,除菌治療が第一選択となっております。
胃MALTリンパ腫
特殊な染色体異常を伴う場合を除き,当疾患に対する除菌治療の寛解率は60-80%と報告されており,除菌治療の有用性が示されてます。
特発性血小板減少性紫斑病
血小板を特異的に破壊する体内の免疫反応(自己抗体)により著明な血小板減少を引き起こし,脳出血を初めとする臓器出血を合併する疾患です。
数多くの国々よりH.pyloriとの関連性が報告されており,除菌治療による有効率が25-30%と報告されており,他の治療法に比し,簡易な除菌治療は第一選択とされています。
萎縮性胃炎,胃癌
H.pyloriによる持続感染に伴い,胃粘膜は徐々に萎縮(本来の腺上皮の萎縮変化)腸上皮への置換が進行します.多くの胃癌はこの萎縮粘膜および腸上皮から発生します。
早期の除菌により,萎縮の進行は予防できますが,持続感染の期間が長いほど萎縮性胃炎は進行し,胃癌のリスクは上昇します。
またこの段階で行っても萎縮粘膜の著明な改善は認められず,これらの粘膜より発生する胃癌リスクは6-10倍とも報告されています。
胃癌の発生リスクを下げるためには,早期のH.pyloriの検出および早期の除菌が極めて大切なものと言えます。
胃過形成性ポリープ
持続的な胃炎に基づき形成されるポリープですが,Ohkusa4)らの試験成績では,約70%の患者様で除菌による縮小・消失が認められたと報告されており,除菌治療による有効性が示されております.このようにH.pylori多彩な疾患を引き起こす可能性のある菌です。
除菌治療は抗生剤2種類,酸分泌抑制薬1種類の計3種類を1週間内服する比較的簡易で負担の少ない治療であり,これらの疾患・病態を予防ないし治療することを目的とした場合に大変有用な対策となります。
・ 診療の流れ(フローチャート)
参考文献
1)榊 信廣:消化器内視鏡医が知っておくべきH.pylori感染症の知識.消化器内視鏡 21:333-341,2009
2)日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会:日本ヘリコバクター学会“H.pylori感染の診断と治療のガイドライン“2009改訂版.日本ヘリコバクター学会誌10:104-208,2009
3)Miwa H,Sasaki N,Sugano K et al:Recurrent peptic ulcers in atients following successful Helicobacter pylori eradication:A multicenter study of 4940 patients.Helicobacter9:9-16,2004
4)Ohkusa T,Takashimizu I,Fufiki K et al:Disappearance of hyperplastic polyps in the stomach after eradication of Hericobacter pylori.A randomized,clinical trial.Ann InternMed 129:712-715,1998
文責:消化器病センター(内科) 中村文彦














