整形外科

ご挨拶

厚生中央病院整形外科は、地域に密着した一般病院という立場を生かし、身近な整形外科であることを心掛けています。またチームで診療することで専門性と一般性を両立させ、「人を診る」との観点を忘れずに診療を行っています。

とくに「骨折治療」「人工関節」「脊椎手術」「手外科」「膝の外科」「骨粗鬆症」などが当科の得意とする分野で、整形外科疾患の主な分野は守備範囲内です。

整形外科は約60~70床を使用しています。整形外科医師をはじめ、看護スタッフ、リハビリテーションスタッフ、薬剤師スタッフ、栄養科スタッフなどがチームとして診療を行っています。

リハビリテーションスタッフも充実して、入院・手術から外来治療まで一貫したリハビリテーションを行っています。

骨粗鬆症による脆弱性骨折、とくに大腿骨近位部骨折や脊椎圧迫骨折は当科で多くの方の治療をおこなっていますが、身体機能の回復には時間が必要です。当院では初期の病態が落ち着いた後、「地域包括ケア病棟」に移っていただくことで、リハビリテーションを行いながら退院後の準備をすることができます。

2020年春より、東邦大学大橋病院整形外科と連携しています。難しい疾患や、それぞれが得意とする疾患を紹介することで、連携して治療することを目指しています。

診療内容

  1. おおくの人工関節(股関節、膝関節)手術を行っています。2013年秋より人工関節センターを設立しました。
    詳細は「人工関節センター」の項目をみてください
  2. 骨粗鬆症: 詳細は「骨粗鬆症」の項目をみてください
    骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折は、当院の入院患者数でもっとも多い疾患です。当院では主に安静にすることを中心にした「積極的安静療法」を行ってきました。入院期間はすこし延長しますが、リハビリテーションを早期から行うことで成績は安定しており、多くの方は骨折以前の生活に戻っています。まれですが状況にあわせて手術を行うことがあります。「積極的保存療法」と「手術による治療」を適宜選択してゆくことで適切な治療を行えるように心がけています。さらに骨粗鬆症治療を徹底してさらなる骨折を積極的に予防する努力をしています。
  3. 大腿骨近位部骨折は、基本的には手術をする疾患です。なるべく早期に手術を行い、早期にリハビリテーションを開始するようにしています。ご高齢の方に多い骨折ですので、既往症のコントロールが大切ですが、総合病院であることが利点です。入院中に、あわせて骨粗鬆症治療を徹底して、さらなる骨折を積極的に予防する努力をしています。
  4. 脊椎疾患は脊椎を専門とする医師が治療を行っています。椎間板ヘルニア、脊椎管狭窄症、すべり症などを診療しています。必要に応じて脊椎の手術も行っています。
    詳細は「脊椎手術の実際」の項目をみてください
  5. 手の障害の診療をしています。手の障害は実は頻度が高くよく見る病態です。原因はさまざまですが、年齢による変化、使い過ぎなども原因となりますし、原因不明もありますので、完治できない障害も残念ながら数多くありますが、なるべく障害を取り除き、生活のなかで手を使用しやすくするのが目標となります。丁寧な診察が必要です。母指CM関節症や、腱炎などの過使用症候群(over-used syndrome)は、手術は最終手段と考え、装具などを用いて障害部位の安静を中心とした支持的な治療法を行い、成績は安定しています。その他、手の外傷など、さまざまな疾患を診療しています。2009年より日本手外科学会認定施設です。
  6. 当院では、地域に密着した医療を行っています。一般的な外傷(骨折や捻挫)や、腰痛などの治療も行っています。手術に限らず保存的な治療を行うことができる病院です。

検査装置

  • X線診断装置
  • CT診断装置
  • 超音波診断装置
  • 全身骨塩測定器
  • MRI(1.5テスラ)
  • RIシンチグラフィー

主な疾患

整形外科は運動器官を診療する専門科です。

運動器官は、内臓を除くほとんどの器官が含まれます。骨、筋肉、靭帯、腱、関節、軟骨、末梢神経などが対象となります。運動器官の症状もさまざまですが、痛み、腫脹、変形、しびれ感、麻痺などを診療する科です。

  • 外傷:骨折、捻挫、など

  • 関節症:変形性膝関節症、変形性股関節症、など

  • 脊椎疾患:腰部脊柱管狭窄症、頚椎症性神経根症、腰痛症、など

  • スポーツ障害やスポーツ外傷、

  • 手や上肢の障害:腱炎(ばね指(狭窄性腱炎)、デユケルバン症候群)、末梢神経障害(肘部管症候群、手根管症候群)、手指関節症(母指CM関節症、ヘバーデン結節、ブシャール結節)など

  • 骨粗鬆症

  • 骨粗鬆症による脆弱性骨折(脊椎圧迫骨折、大腿骨近位部骨折、橈骨遠位端骨折など)

  • 関節リウマチ、結晶性関節症、など

中山 隆之(なかやま たかゆき)

役職

統括部長

診療科

認定資格

日本整形外科学会専門医

専門分野

骨軟部腫瘍

佐々木 伸(ささき しん)

役職

部長、リハビリテーション科部長

診療科

認定資格

日本整形外科学会専門医 日本整形外科学会スポーツ認定医 日本整形外科学会運動器リハビリテーション認定医 日本リウマチ学会専門医 日本手外科学会専門医 日本骨粗雑症学会認定医 身体障害者手帳指定医(肢体不自由) 順天堂大学整形外科非常勤講師

専門分野

手外科 リウマチ 骨粗鬆症 外傷

相馬 真(そうま まこと)

役職

副部長

診療科

認定資格

日本整形外科学会専門医 日本整形外科学会脊椎脊髄病医 日本脊椎脊髄病学会指導医

専門分野

脊椎脊髄外科

西川 洋平(にしかわ ようへい)

役職

医長

診療科

認定資格

整形外科学会専門医

専門分野

整形外科一般

川原 佳祐(かわはら けいすけ)

役職

医長

診療科

認定資格

日本整形外科学会専門医 日本医師会認定健康スポーツ医 日本整形外科学会認定リハビリテーション医 日本整形外科学会スポーツ認定医 日本整形外科学会リウマチ認定医 日本リハビリテーション医学会認定医

専門分野

膝関節外科 スポーツ整形外科

川村 大悟(かわむら だいご)

役職

医師

診療科

認定資格

日本整形外科学会専門医 整形外科学会運動器リハビリテーション医 整形外科学会リウマチ医

専門分野

整形外科一般

稲森 広治(いなもり こうじ)

役職

医師

診療科

認定資格

整形外科専攻医

専門分野

整形外科一般

魚住 芳史(うおずみ よしふみ)

役職

医師

診療科

認定資格

整形外科専攻医

専門分野

整形外科一般

小林 昂之(こばやし たかゆき)

役職

医師

診療科

認定資格

整形外科専攻医

専門分野

整形外科一般

亀井 理彰(かめい まさあき)

役職

医師

診療科

認定資格

整形外科専攻医

専門分野

整形外科一般

午前 亀井 理彰
【初診】
(整形一般)

相馬 真

(脊椎)

佐々木 伸
(手・リウマチ)
稲森 広治
【初診】
(整形一般)

西川 洋平

(膝・股関節)

魚住 芳史
(整形一般)
魚住 芳史
【初診】
(整形一般)

川原 佳祐

(膝・スポーツ)

佐々木 伸
(手・リウマチ)
小林 昴之
【初診】
(整形一般)

相馬 真

(脊椎)

中山 隆之
(腫瘍)
川村 大悟
【初診】
(股関節)

西川 洋平

(膝・股関節)

小林 昴之
(整形一般)
4/6:
西川 洋平
相馬 真

4/13:
川村 大悟
稲森 広治

4/20:
亀井 理彰
佐々木 伸

4/27:
魚住 芳史
川原 佳祐
午後 中山 隆之
(腫瘍)
※要予約

川村 大悟
(股関節)
※要予約
亀井 理彰
(整形一般)
※要予約

川原 佳祐
(膝・スポーツ)
※要予約
川村 大悟
(股関節)
※要予約

稲森 広治
(整形一般)
※要予約
中山 隆之
(腫瘍)
※要予約

稲森 広治
(整形一般)
※要予約
川原 佳祐
(膝・スポーツ)
※要予約

相馬 真
(脊椎)
※要予約

初診外来(午後)受付時間:13:30~15:00

休診・代診情報

  • 金曜日

    小林昴之医師 休診

  • 土曜日

    佐々木伸医師 休診

  • 火曜日

    川原佳祐医師 休診

  • 木曜日

    小林昴之医師 休診(代診あり)

  • 金曜日

    小林昴之医師 休診

令和4年 入院患者の疾病統計

順位 疾患名 件数
1 股関節大腿近位骨折(大腿骨頚部骨折等) 100件
2 脊椎圧迫骨折(脊椎骨粗鬆症および外傷性) 98件
3 膝・股関節症(股関節骨頭壊死を含む)

93件

4 脊柱障害(脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、脊椎症など)

54件

5 足関節・足部の骨折

36件

6 前腕の骨折

30件

7 膝の外傷(半月板損傷、前十字靱帯損傷等)

24件

8 肘関節周辺の骨折・脱臼

20件

9 肩関節周辺の骨折・脱臼

17件

10 鎖骨骨折

15件

11 膝関節周辺骨折

15件

12 手関節周辺骨折

11件

その他

116件

合計  

629件

令和4年 手術件数

順位 疾患名 件数
1 人工関節置換術(股) 64件
2 骨折観血的手術(大腿) 53件
3 人工関節置換術(膝)

42件

4 骨折観血的手術(下腿)

41件

5 人工骨頭挿入術(股)

33件

6 骨内異物(挿入物を含む。)除去術(下腿)

32件

7 骨折観血的手術(前腕)

29件

8 骨移植術(軟骨移植術を含む。)(自家骨又は非生体同種骨移植と人工骨移植の併施)(その他の場合)

26件

9 脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(多椎間又は多椎弓の場合を含む。)(後方椎体固定)

19件

10 超音波骨折治療法(一連につき)

16件

11 骨折観血的手術(上腕)

12件

12 骨内異物(挿入物を含む。)除去術(鎖骨)

12件

13 内視鏡下椎間板摘出(切除)術(後方摘出術)

10件

14 骨内異物(挿入物を含む。)除去術(前腕)

9件

15 骨内異物(挿入物を含む。)除去術(大腿)

8件

16 関節鏡下半月板縫合術

8件

17 脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(多椎間又は多椎弓の場合を含む。)(前方後方同時固定)

8件

18 人工関節再置換術(股)

7件

19 経皮的椎体形成術

7件

20 アキレス腱断裂手術

6件

21 皮膚切開術(長径10センチメートル未満)

5件

22 骨折観血的手術(鎖骨)

5件

23 骨折観血的手術(膝蓋骨)

5件

24

骨内異物(挿入物を含む。)除去術(上腕)

5件

25

関節鏡下靱帯断裂形成手術(十字靱帯)

5件

26

骨折経皮的鋼線刺入固定術(上腕)

4件

27

骨内異物(挿入物を含む。)除去術(膝蓋骨)

4件

28

関節脱臼非観血的整復術(肩)

4件

29

関節内骨折観血的手術(肘)

4件

30

脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(多椎間又は多椎弓の場合を含む。)(後方又は後側方固定)

4件

31

脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(多椎間又は多椎弓の場合を含む。)(椎弓形成)

4件

32

創傷処理(筋肉、臓器に達するもの(長径10センチメートル以上)(その他のもの))

3件

33

創傷処理(筋肉、臓器に達しないもの(長径5センチメートル未満))

3件

34

腱移行術(指(手、足))

3件

35

骨折非観血的整復術(前腕)

3件

36

骨折経皮的鋼線刺入固定術(指(手、足))

3件

37

観血的整復固定術(インプラント周囲骨折に対するもの)(大腿)

3件

38

骨折観血的手術(指(手、足))

3件

39

関節脱臼非観血的整復術(股)

3件

40

内視鏡下椎弓切除術

3件

41

椎間板内酵素注入療法

3件

42

四肢・躯幹軟部腫瘍摘出術(手)

2件

43

骨折非観血的整復術(下腿)

2件

44

骨折非観血的整復術(足その他)

2件

45

骨折経皮的鋼線刺入固定術(手)

2件

46

偽関節手術(手舟状骨)

2件

47

偽関節手術(鎖骨)

2件

48

化膿性又は結核性関節炎掻爬術(股)

2件

49

関節脱臼非観血的整復術(足)

2件

50

関節脱臼観血的整復術(股)

2件

51

関節鏡下関節滑膜切除術(膝)

2件

52

関節鏡下関節鼠摘出手術(膝)

2件

53

関節鏡下半月板切除術

2件

54

関節内骨折観血的手術(手)

2件

55

関節内骨折観血的手術(指(手、足))

2件

56

人工関節抜去術(股)

2件

57

人工関節再置換術(膝)

2件

58

手根管開放手術

2件

59

脊椎内異物(挿入物)除去術

2件

60

椎間板摘出術(後方摘出術)

2件

61

脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(多椎間又は多椎弓の場合を含む。)(椎弓切除)

2件

62

創傷処理(筋肉、臓器に達するもの(長径5センチメートル未満))

1件

63

創傷処理(筋肉、臓器に達するもの(長径5センチメートル以上10センチメートル未満))

1件

64

創傷処理(筋肉、臓器に達しないもの(長径10センチメートル以上))

1件

65

デブリードマン(100平方センチメートル未満)

1件

66

デブリードマン(100平方センチメートル以上3、000平方センチメートル未満)

1件

67

四肢・躯幹軟部腫瘍摘出術(前腕)

1件

68

腱縫合術

1件

69

骨折観血的手術(手舟状骨)

1件

70

骨折観血的手術(手(舟状骨を除く))

1件

71

骨折観血的手術(足)

1件

72

骨腫瘍切除術(手)

1件

73

骨腫瘍切除術(足)

1件

74

化膿性又は結核性関節炎掻爬術(肩)

1件

75

関節脱臼非観血的整復術(肘)

1件

76

関節脱臼観血的整復術(肩鎖)

1件

77

関節内異物(挿入物を含む。)除去術(膝)

1件

78

関節滑膜切除術(股)

1件

79

関節鏡下関節滑膜切除術(股)

1件

80

関節内骨折観血的手術(足)

1件

81

関節鏡下関節内骨折観血的手術(膝)

1件

82

観血的関節授動術(手)

1件

83

観血的関節授動術(足)

1件

84

関節鏡下股関節唇形成術

1件

85

四肢切断術(足)

1件

86

四肢切断術(大腿)

1件

87

脊椎骨(軟骨)組織採取術(試験切除によるもの)(その他のもの)

1件

88

脊椎固定術、椎弓切除術、椎弓形成術(多椎間又は多椎弓の場合を含む。)(前方椎体固定)

1件

89

神経縫合術(指(手、足))

1件

90

神経移行術

1件

合計  

590件

整形外科 人工関節センター

多数の人工関節(股関節、膝関節)手術をおこなっています。手術後経過が安定していても、継続的に経過をみてゆくために2013年秋より人工関節センターを設立しました。

人工関節センター

当院では人工関節手術を開始してから30年以上の経験があり、経験に培った技術で、最近では年間約200件を手術しています。

人工関節を長期間使用すると、人工関節部品がゆるみを生じることなどの「人工関節障害」が生じることがまれにありますので、定期的な診察は大切です。そこで将来的に専門的かつ継続的に経過を診ることを目的に、2013年10月に人工関節センターを設立しました。 センター化することで、①人工関節を得意とする医師が専門的に、かつ継続的に診察できること、②看護スタッフ、リハビリテーションスタッフも人工関節手術前後の看護に慣れていること、③住み慣れた地域で、希望にそったタイミングでの入院手術、などの利点があります。

手術後にも十分に時間をかけて歩行訓練を行っているため、入院期間が全国平均よりも若干長くなっています。退院を急がないのが当院の良い点と考えています。また外来通院リハビリテーションをすることで、希望により早期退院も可能です。

当院での人工関節の基本方針

  • 人工股関節手術
    以前よりセメントレス手術を行っています。手術後早期より起立・歩行を開始します。平均の入院期間は3~4週間です。
  • 人工膝関節手術
    ハイブリッド手術(脛骨にセメント、大腿骨にはセメントレス)です。手術後のスケジュールは股関節とほぼ同様です。
    状況に応じて全血、非凍結保存法による自己血貯血を使用することがあります。採取したご自分の血液は3週間の保存できます。
人工関節手術をうけていらっしゃる方の注意事項
  • 調子がよくても、定期検診は必要です。(6-12ヶ月に1回は最低必要です)
  • 他病院、診療科などを受診するときには必ず医師に伝えましょう。
  • 調子が変だと思ったら、受診しましょう。

整形外科 骨粗鬆症

高齢化に伴い骨の健康が話題になっています。骨粗鬆症は、骨折するまで症状はありませんので、気が付かないうちに進行します。

血圧や血糖値、脂質などと同様に、骨粗鬆症のチェックをすることをお勧めします。世界的に女性は50~55歳、男性は65歳に一度測定することが勧められています。当院では世界標準の全身型骨密度測定器を使用しています。測定器の上に寝て15分で痛みなく検査できます

骨粗鬆症サポートチーム

骨粗鬆症では骨折は連鎖して次々と骨折しやすくなることが知られていますので、骨折したら骨粗鬆症治療を開始して次の骨折を少なくしようという試みが世界的に行われています。
しかしながら日本では骨折治療を受けた方の中で骨粗鬆症治療をしている方の割合は2割くらいといわれており、8割の方の70%はまた別の骨折をして、だんだんと健康度合が低下して、寝たきりに近づくことが知られています。そこで当院では骨折で治療をした方の、次なる骨折を未然に防ぐことを目的(二次骨折予防)に、2016年に骨粗鬆症サポートチームを結成しました。骨粗鬆症治療の薬剤を開始して継続することをお勧めすることが主なる目的です。地域のクリニックで継続することをお勧めしています。

整形外科 脊椎手術の実際

高齢化に伴い骨の健康が話題になっています。骨粗鬆症は、骨折するまで症状はありませんので、気が付かないうちに進行します。 血圧や血糖値、脂質などと同様に、骨粗鬆症のチェックをすることをお勧めします。世界的に女性は50~55歳、男性は65歳に一度測定することが勧められています。当院では世界標準の全身型骨密度測定器を使用しています。測定器の上に寝て15分で痛みなく検査できます

腰部脊柱管狭窄症(ようぶ せきちゅうかん きょうさくしょう)

1)病態

加齢に伴い椎間板の水分が失われると、椎間板は徐々につぶれて周囲にはみ出すようになります。 神経の通り道(脊柱管)にもはみ出してくると脊柱管は狭くなり、また脊柱管の後面を構成している黄色靭帯も徐々に厚くなるために脊柱管はさらに狭くなります。 やがて神経が圧迫されるようになると下肢の痛み・しびれや神経が原因の腰痛などが出現し、さらに進むと休み休みでないと歩けない、いわゆる間欠性跛行(かんけつせいはこう)が出現します。前かがみなると脊柱管が少し広がるため、手押し車を押して前かがみで歩くと休まずに歩ける人もいます。近年人口の高齢化に伴いこの疾患は増加していますが、最近では旅行やスポーツを楽しみたいという理由で早めに手術を選択される方が増えています。

2)MRI(矢状面断層:体を縦に切って断面を横から見た画像)

3)手術療

(1)椎弓切除術 

通常は部分椎弓切除術(開窓術)が広く行われます。これは神経が圧迫されているところだけ椎弓の一部と黄色靭帯を切除して神経の圧迫を取り除く手術です。麻酔は全身麻酔で通常は1~2時間ほどで終わりますが、再手術の場合は神経周囲の癒着などためさらに時間がかかります。狭窄が高度な時や再手術の場合などは椎弓全体を切除する広範囲椎弓切除術が行われることがあります。

(2)脊椎固定術

脊椎すべり症や脊椎が不安定な場合などは脊椎固定術が行われます。固定方法として一般に後方椎体固定術(図)または後側方固定術が行われていますが、これ以外にもより侵襲の少ない様々な方法が工夫されています。当院ではすべりを戻す必要がある時は後方椎体固定術を、そのままの位置で固定する時は後側方固定術を行っています。多くの場合、金属固定(脊椎インスツルメンテーション)と骨移植術が併用されます。

3)後療法・費用

手術の翌日から座って食事ができ、2~3日で歩くことができます。椎弓切除術では術後に軟性コルセットを1カ月間、脊椎固定術の場合は硬性コルセットを3カ月間装着します。入院期間は2~3週程度です。治療費は保険の自己負担分(通常3割:20~30万円)を病院へ一旦支払いますが、高額療養費制度により、ご加入の健康保険に申請すると一定の額を超えた金額が戻ってきます。

腰椎椎間板ヘルニア(ようつい ついかんばん へるにあ)

1)病態

椎間板は椎体と椎体の間にありクッションの役目をする弾力性のある組織です。中央の柔らかい髄核と周りを囲む丈夫な線維輪の二重構造になっていますが、線維輪の亀裂から髄核が後ろに脱出して神経根を圧迫するようになったものが椎間板ヘルニアです。 腰痛と圧迫された神経根の支配領域の痛み、しびれ感が主な症状ですが、圧迫が強いと足首や足指の運動麻痺を来たすことがあります。

2)MRI(矢状面断層:体を縦に切って断面を横から見た画像)

3)MRI(横断面像)

4)神経根知覚支配領域(しびれの場所:若干個人差があります)

5)手術法

(1)経皮的髄核摘出術(Percutaneous Nucleotomy: PN) 

腰の皮膚を1cmほど切開し、金属の管を椎間板の中央まで入れて髄核を摘出する方法です(図)。ヘルニアを摘出せず、椎間板の内圧を下げることで神経の圧迫の軽減を期待します。40歳以下の若い人が対象となりますが、再手術の方やヘルニアが脱出して移動したタイプには適応されません。局所麻酔で行うため、日帰りか数日の入院で済み、保険が適用されて決められた額の自己負担で受けられます。効果については70%の人に何らかの改善があると報告されています。

(2)Love法

腰部の皮膚を5cmほど縦に切開して椎間板ヘルニアを切除する方法です。ヘルニアを直接切除して神経の圧迫を取り除くので下肢痛の改善が良く、古くから椎間板ヘルニアの標準的な手術方法として広く行われています。全身麻酔で行われ、良好な視野を得るために骨の一部を削る場合もあります。術後2~3日で歩行を開始し10日から2週間ほどで退院になります。 最近では従来のLove法よりも小さな手術創や、神経を愛護的に扱うことを目指して顕微鏡視下椎間板ヘルニア切除術(Micro Love法)も行われるようになってきました。いずれも保険が適用され、一定額の自己負担で手術を受けることができます。

(3)内視鏡椎間板切除術(MicroEndoscopic Discectomy: MED)

直径16mmの内視鏡を通して椎間板ヘルニアを切除する方法です(図)。手術創が2cm程度と小さいことが特徴で、筋肉への侵襲や術後疼痛も少ないとされています。Love法と比較した多くの報告がありますが、下肢痛の改善はLove法と同程度に良好で、手術の翌日から歩行を開始し数日から1週間ほどで退院になります。 また、保険が適用されますのでLove法と同じ程度の費用で受けられます。このようにメリットの多い方法ですが、デメリットとして手技に習熟を要することが挙げられます。そのため、現在MEDの専門医のもとでトレーニングを受けることが勧められています。

頚椎症性脊髄症(けいついしょうせい せきずいしょう)

1)病態

腰部脊柱管狭窄症と同じように、加齢により頚椎の椎間板や黄色靭帯が膨隆して脊髄を圧迫する疾患です。初めは手のしびれ程度ですが、脊髄の圧迫が進むと、箸やボタン掛けがぎこちなくなり、紐を結ぶ・字を書くなど指の細かい動作が不自由になってきます。また足の運びもぎこちなくなり、進行すると歩くのに支えが必要になります。この疾患は加齢とともに少しずつ進む傾向があり、手の巧緻性障害や歩行障害が長く持続する時や、症状が進行するときは手術が勧められます。また転倒したときに急に悪化し四肢の麻痺を来すことがあるので注意が必要です。

2)手術

(1)選択的椎弓切除術

脊髄が圧迫されている部分の椎弓だけ1ないし2個所を切除する方法で、棘突起とこれに付着する靭帯はできるだけ温存します。

(2)椎弓形成術(脊柱管拡大術)

脊髄後方の椎弓に切れ目を入れ、ドアを開くように移動させて脊柱管を拡大させる方法です。拡大の方法には、片側に開く片開き式 と両側に開く正中縦割式がありますが、前者は慶応大学の平林教授により、後者は東京大学の黒川教授により考案された方法で、現在は世界でもこの方法が多くの国で行われています。当科では脊髄圧迫の状態によってどちらかを選択しています。